執筆:ジンさえあれば。運営

「京都蒸溜所」|六つに分けて、最後に合わせる。「季の美」を生んだ造り手

和紙の上に並ぶガラス器と柑橘の皮、茶葉のイメージ
柑橘と茶葉から、香りの組み立てを考える。

「季の美」に興味を持ったら、次に知ってほしいのは、原料の豪華さより「分けて造る」という仕事です。京都蒸溜所は、香りの材料を六つのグループに分けて蒸溜し、最後に合わせます。2025年に生産拠点を新しくしても、その考え方を引き継いでいます。[2,11]

一本選ぶなら、まずは「季の美 京都ドライジン」から。お茶を中心に知りたければ「季のTEA」、果実の甘酸っぱさに興味があればジンとは別の製品である「季の梅」もあります。造り手のページでは、似た名前のボトルを整理しながら、京都とのつながりをたどっていきましょう。

「季の美」「京都蒸溜所」「季の美House」は、それぞれ何?

最初に整理すると、「季の美」はブランドとその代表的な商品名。造る会社は株式会社京都蒸溜所です。現在の生産拠点として案内されている新蒸溜所は、京都府亀岡市にあります。国内販売はペルノ・リカール・ジャパンが取り扱っています。[10,11]

一方、京都市内の「季の美House」は、カクテル、買い物、展示、セミナーなどを通じてブランドを知る施設。亀岡の製造施設とは別です。京都旅行で訪ねてみたいなら、まずHouseの営業案内を見ると目的に合った計画を立てやすくなります。[12]

古い記事に京都市南区の住所が出てきても、間違いとは限りません。それは以前の生産拠点や当時の会社情報です。「昔どこで始まったか」と「今どこで造っているか」を分けると、京都蒸溜所の歩みが見えてきます。

会社設立は2014年。「季の美」の発売は2016年

京都蒸溜所の歴史は、「2014年創業」の一行で済ませると少し分かりにくくなります。会社自身が2020年に出した説明では、会社設立が2014年12月、蒸溜所の創業が2015年、「季の美 京都ドライジン」の発売が2016年10月です。[10]

会社設立は2014年12月、蒸溜所の創業は2015年、季の美 京都ドライジンの発売は2016年10月。2025年10月に亀岡市の新しい生産拠点へ。京都市内の季の美Houseは生産施設とは別。
「会社の設立」「蒸溜所の創業」「商品の発売」を分けて読む年表。
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会社設立は2014年12月、蒸溜所の創業は2015年、季の美 京都ドライジンの発売は2016年10月。2025年10月に亀岡市の新しい生産拠点へ。京都市内の季の美Houseは生産施設とは別。

事業の創業パートナーはDavid Croll、Noriko Kakuda Croll、Marcin Miller。2020年の資本提携発表には、この三人の名前が記されています。[13] 英国にルーツを持つジンと、日本の素材やものづくり。京都蒸溜所を読む面白さは、その両方の間に、実際の仕事のつながりがあることです。

新しい事業が、以前からある農業や工芸の仕事と関係を築いてきた。そう捉えたほうが、この造り手の挑戦が伝わります。

名前がそろった2020年

以前の運営会社名は株式会社Number One Drinksでした。2020年3月にペルノ・リカールとの資本提携を発表し、同年9月1日付で株式会社京都蒸溜所へ社名を変更。蒸溜所と会社の名前をそろえています。[10]

資本提携の発表時から、投資の主な使い道として挙げられていたのが、新たな蒸溜所の建設でした。[13] 2025年の新施設は、突然現れた話ではなく、増える需要に応えるための計画の先にあります。

小皿に分けたジュニパーベリー、コリアンダーと柑橘の皮のイメージ
植物の香りを、ひとつずつ。

素材を集めるだけでは、一杯にならない

「季の美」の基本品は、米由来のスピリッツをベースに、11種類の植物素材を使います。柚子やレモンは柑橘、お茶は玉露、生姜はスパイス。それぞれの性格に合わせて扱えるよう、六つのグループに分けています。[6]

別々に蒸溜する意味は、単に作業を増やすことではありません。どの段階の蒸溜液を使うかをグループごとに変え、取り出した香りを後で組み立てるためです。京都蒸溜所が「混和」と呼ぶブレンド(別々に造った蒸溜液を合わせること)は、ここで重要な役割を担います。[2]

素材を一つずつ目立たせれば、よいジンになるとは限らない。かといって全部を同じにしてしまえば、それぞれを分けた意味がなくなる。味わいを設計する仕事として読むと、ボタニカルの一覧も単なる植物図鑑ではなくなります。

水にも地域とのつながりがあります。現行の製法説明では伏見の伏流水を使うことが示され、2020年の会社資料では「月の桂」の増田德兵衞商店の仕込み水が紹介されています。[2,10]

茶舗と唐紙。京都との関係が、ボトルに残る

「季のTEA」は、宇治の堀井七茗園との共同開発で生まれました。玉露と碾茶をこのジンのために組み合わせるという、具体的な仕事です。[3] 「京都の茶を使った」で終わらず、お茶を扱う側とジンを造る側の接点が見える一本になっています。

もう一つ、飲む前から目に入るつながりが、ボトルの文様(繰り返し使われる装飾の模様)です。KIRA KARACHO(雲母唐長)が文様を監修。原料や製法だけでなく、手に取ったときの姿にも京都の工芸が関わっています。[2]

その関係は「季の美House」にも続きます。改装した町家に、京都の家具づくりや西陣織、唐紙(文様を刷り込んだ装飾用の紙)を取り入れている。建築の総合デザインは、創業者の長男ダグラス・角田・クロールが手がけています。[12] 瓶に描かれた模様から、実際に過ごせる空間へと話がつながるところは、このブランドを掘り下げる楽しみです。

2025年、亀岡へ。大きくしても、分けて造る

京都蒸溜所は2025年10月、亀岡市の新施設へ新たな一歩を進めました。現在の施設紹介には、ドイツCARL社製の1,000L蒸溜器が4基、以前の施設から移した140Lと450Lの小型蒸溜器が記されています。小型の2基は試験蒸溜や少量生産に使われています。[14]

ここで読みたいのは、単純な「何倍になった」という規模の話だけではありません。新施設の発表では、大きな蒸溜器一つに集約するより、複数の蒸溜器で工程を維持する選択が説明されています。[11] 小さく分ける作業と生産量の拡大を、どう両立するか。その課題への答えが施設の構成にも表れています。

設備面では、再生可能エネルギーによる電力でボイラーを稼働させ、施設で化石燃料を使わない方針が示されています。[14] 対象は施設の稼働で、原料栽培や包装、輸送を含む製品全体の環境負荷とは別です。

製品は、上下より「どこへ広げたか」で見る

基本を知る:「季の美 京都ドライジン」(きのび)

造り手の入口になる代表品。購入後の一杯まで具体的に知りたい人は、「季の美」の選び方と飲み方へ。「季のTEA」や「季の美 勢」と迷ったときの違いも、こちらにまとめています。

お茶へ広げる:「季のTEA」(きのティー)

堀井七茗園との共同開発で、お茶を軸にした表現を探るジンです。基本品にも茶は含まれますが、こちらは玉露と碾茶(てんちゃ。抹茶にひく前の茶葉)の配合が選ぶ理由になります。[3]

カクテルへ広げる:「季の美 勢」(きのび・せい)

基本品と同じ素材構成を使い、度数とブレンドの方向を変えた一本。前身は「季の美 ネイビーストレングス」です。ネイビーストレングスは、高い度数のタイプを指す呼び名です。2020年には「季の美 勢」のパッケージ変更が告知されました。古いボトル名を見かけたとき、無関係な別ブランドだと思わずに済む手がかりになります。[4,15]

ジンからリキュールへ:「季の梅」

「季の梅」は、ジンをベースにした「京都プラムアンドベリーリキュール」。京都産の梅・城州白と北海道産ハスカップを浸し、甜菜糖を加える製品です。ドライジンと同じつもりで買うより、果実と甘みのある別の楽しみとして選ぶほうが期待に合います。[16]

甘さを加える:「季のTOU」

公式英語サイトに掲載されている「季のTOU」は、蒸溜後に与那国島の黒糖を加えるオールドトムスタイル(甘みを加えたタイプのジン)です。「季の梅」のように果実を主題とするのではなく、黒糖を使ってジンの方向を変える一本。国内の現行流通は別途確認が必要です。[17]

過去の限定品から見る:「季能美 32nd Edition」

「季能美」の第32弾は、「季の美」8周年のための限定品として公式に紹介されています。Caroniのラム熟成に使われた樽で寝かせ、与那国島の黒糖を加えたもの。[18] 「樽に入れたジン」の一言でも、以前その樽に何が入っていたか、最後に何を加えたかで物語が変わります。

過去の限定品のため、現在の販売状況は公式案内で確認してください。

六つの香りが、六つのマカロンになった。

マカロンは、アーモンドの粉・卵白・砂糖などで作る丸い生地に、クリームなどを挟んだ小さな洋菓子です。ここでは、ジンの香りをそのお菓子で表現した話を紹介します。

2024年10月31日、「季の美」とピエール・エルメ・パリのコラボレーションが発表されました。着想源は、ジンを組み立てる六つのエレメント。植物素材を分けて蒸溜する、六つのグループのことです。玉露、柚子、生姜、紫蘇、ジュニパー、山椒を使うマカロンと、それぞれに合わせるカクテルが紹介されています。[S2]

香りを知る入口は、グラスの中だけではない。お菓子に表現を変えることで、植物の名前から味わいを想像する別の道が生まれます。2024年の期間限定企画です。

家での料理や一杯へ戻りたくなったら、「季の美」の食事・食後の楽しみ方へ。

京都で体験するなら、まず「季の美House」へ

展示で造りを知ってから飲むのも、気になったカクテルから造りへ戻るのもよい楽しみ方です。Houseには原料や工程の展示、ボトルの変遷を見られる場所があり、テイスティングセミナーは完全予約制です。公式サイトから予約へ進めます。[12]

ただし、ここで案内しているのはブランドハウスでの体験です。亀岡の生産施設を自由に見学できるという案内ではありません。旅行の予定を立てる前に、「季の美House」の公式案内で営業日と予約条件を確かめてください。

一杯の中から、柚子、お茶、水、紙の文様、造り手の仕事へと興味が広がっていく。その入口として、京都蒸溜所は読み応えのある造り手です。まず一本選びたいときは、基本の「季の美」へ戻ってみてください。

お酒は20歳になってから。

出典と参考資料

資料確認:2026年10月20日。香味はメーカーの説明を参照しています。

[2] 製法と文様 ↗[3] 季のTEA ↗[4] 季の美 勢 ↗[6] 素材のグループ ↗[10] 会社・創業・商品発売の年月 ↗[11] 新施設・国内販売・グループ ↗[12] 季の美House ↗[13] 資本提携と創業者 ↗[14] 現行施設 ↗[15] 過去商品名と2020年包装 ↗[16] ジン以外の製品・季の梅 ↗[17] 季のTOU ↗[18] 過去限定例・季能美32 ↗
[S2] ペルノ・リカール・ジャパン:2024年ピエール・エルメ・パリとのコラボレーション ↗
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